「実家を売ったら税金はいくらですか」と聞かれて、こちらが「お父様が買われたときの売買契約書は残っていますか」と伺うと、半分くらいの方が「探してみます」とおっしゃいます。そして、見つからないことが多いです。
この「契約書が見つからない」は、柏市の実家売却でいちばん金額に響く見落としです。取得費が証明できないと、税金の計算上、買った値段が「売値の5%」として扱われます。その結果、払う税金が100万円単位で変わることがあります。この記事では、譲渡所得の計算の仕組みと、契約書がないときに何を探せばいいかを整理します。
※税額の仕組みは2026年10月時点の制度にもとづく一般的な説明です。金額はあくまで目安で、要件や税率は年度で変わります。実際の申告は国税庁のページと税務署・税理士で必ずご確認ください。
税金は「売れた金額」にかかるのではない
まず大前提です。2,000万円で売れたからといって、2,000万円に税率をかけるわけではありません。かかるのは譲渡所得=もうけの部分だけです。
計算式はこうなります。
- 譲渡所得 = 売った金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
取得費は「買ったときの金額+買ったときの諸費用(仲介手数料・登記費用など)」から、建物の減価償却分を引いた額です。譲渡費用は売るときにかかった仲介手数料、測量費、解体費、印紙税などです。

まず探していただきたいのは3か所です。仏壇の引き出し、金庫、そして権利証が入っていた茶封筒の中。ここで本当によく見つかります。
税率は所有期間で2段階
税率は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで分かれます。
| 区分 | 所有期間(売った年の1月1日時点) | 税率(所得税+復興特別所得税+住民税) |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
相続した家で大事なのは、この5年のカウントが「相続した日」からではないことです。相続や贈与で引き継いだ不動産は、亡くなった方が取得した日と取得費をそのまま引き継ぎます。親が昭和に買った家なら、相続した翌月に売っても長期譲渡所得(20.315%)です。ここを短期だと思い込んで慌てて売るのを我慢される方がいますが、その心配は不要です。
取得費が分からないと「売値の5%」になる
本題です。取得費を証明する資料がないとき、税金の計算では概算取得費として「売った金額の5%」を取得費とすることが認められています(国税庁のタックスアンサー「取得費が分からないとき」)。
やさしい救済措置のように見えますが、実際は逆です。2,000万円で売れた家の取得費が100万円しかないことにされるので、もうけが大きく計算され、税金が増えます。

えっ、紙1枚で100万円も変わるんですか。それ、片付けのときに捨てたらいちばん高いゴミになりますね…。
数字で比べてみる(柏市の戸建ての例)
仮の例で比べます。柏市の実家、売却価格2,000万円、譲渡費用(仲介手数料・測量など)70万円とします。
| 契約書がない場合 | 契約書がある場合 | |
|---|---|---|
| 取得費 | 2,000万円×5%=100万円 | 土地600万円+建物30万円=630万円 |
| 譲渡所得 | 2,000−100−70=1,830万円 | 2,000−630−70=1,300万円 |
| 税額(20.315%) | 約371万円 | 約264万円 |
差は約107万円です。契約書1枚を探すかどうかで、この差が出ます。
※「契約書がある場合」は、親が土地600万円・建物600万円で購入し、木造で35年経過したという仮の設定です。建物は後述の減価償却で減るため、取得費の合計は購入額の1,200万円そのままにはなりません。
建物は減価償却で減っていく
ここも誤解が多いところです。契約書に「1,200万円」と書いてあっても、そのまま1,200万円を引けるわけではありません。建物は年々価値が減る前提で計算するため、経過年数分を差し引きます。
自宅など事業用でない建物は、法定耐用年数の1.5倍の年数で計算します。木造なら22年×1.5=33年、償却率0.031です。築35年の木造住宅なら償却の限度に達しており、建物の取得費は購入時の建物価格の5%程度まで下がります。
逆に言えば、土地の購入価格は減りません。だから契約書で「土地がいくら、建物がいくら」が分かれば、土地部分がまるごと取得費として使えます。古い契約書の価値はここにあります。

順番が大事です。契約書探しより先に、3,000万円控除の期限が残っているかを確かめてください。こちらは待ってくれません。
契約書がないときに探す7つの資料
諦めるのはまだ早いです。私たちがお客様と一緒に探すのは次のものです。見つかれば、税務署に取得費の根拠として示せる可能性があります。
- 売買契約書・重要事項説明書の控え…仏壇の引き出し、金庫、権利証の封筒の中。この3か所でよく見つかります
- 購入時の領収書・手付金の預り証
- 住宅ローンの金銭消費貸借契約書、返済予定表…借入額から購入価格を推測する手がかりになります
- 登記簿(登記事項証明書)の抵当権設定の記載…設定された債権額が残っています
- 通帳の出金記録…古い通帳が残っていれば、支払った金額そのものの記録になります
- 分譲時のパンフレット・価格表・新聞折込チラシ
- 国税庁の「建物の標準的な建築価額表」…契約書が総額しか書いていない、または建物価格が不明なときに、建築年と構造から建物価格を推計する方法として国税庁が示しているものです
なお、土地について「市街地価格指数」で当時の価格を推計する方法が紹介されることがありますが、税務署に認められないケースもあります。使うかどうかは必ず税理士に相談してください。
税金そのものを減らせる特例も先に確認する
取得費を探すのと同じくらい大事なのが、特例の確認です。使えれば、取得費の話より影響が大きいことがあります。
- 相続空き家の3,000万円特別控除…昭和56年5月31日以前に建てられた家で、亡くなった方が一人で住んでいた、相続後に誰も住んだり貸したりしていない、売却代金1億円以下などの要件を満たすと、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。期限は相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。要件は相続空き家の3,000万円特別控除の条件チェックリストにまとめています
- 取得費加算の特例…相続税を納めた方が、相続税の申告期限から3年以内に売ると、納めた相続税の一部を取得費に足せます。詳しくは取得費加算の特例をご覧ください
上の例でいえば、3,000万円控除が使えれば譲渡所得は0円になり、税額も0円です。だから順番としては「特例が使えるか」→「取得費の資料を探す」が正解です。期限のある特例を逃してから契約書を探しても遅いからです。
リノーズにできること
私たちは税理士ではないので、申告の代行や税額の断定はできません。ただ、実務では次のことをお手伝いしています。
- 登記事項証明書を取り、抵当権の記載から購入当時の手がかりを探す
- 家の中を片付ける段階で、契約書・権利証・通帳を捨てずに取り分ける(実家まるごとパックでは必ず確認します)
- 3,000万円控除の期限(相続から3年目の年末)に間に合う売却スケジュールを組む。間に合わないなら買取で日付を確定させる
- 必要なら提携の税理士をご紹介する
とくに期限のある特例は、売り出してから買主が決まるまでの数か月を見込んでおかないと間に合いません。相続から2年以上たっている方は、早めにご相談ください。
まとめ
- 税金がかかるのは売値ではなく、譲渡所得=売値−(取得費+譲渡費用)−特別控除
- 取得費を証明できないと「売値の5%」で計算され、税額が100万円単位で増えることがある
- 相続した家は、親の取得日・取得費を引き継ぐので、相続直後に売っても長期(20.315%)
- 契約書は仏壇・金庫・権利証の封筒を探す。なければ登記簿の抵当権、ローン契約書、通帳、建物の標準的な建築価額表
- 順番は「使える特例の確認」が先。3,000万円控除は相続から3年目の年末が期限
売却価格と手取りの見通しは、取得費と特例の前提が分かれば一緒に計算できます。まずは無料査定をご利用ください。最短30分で価格と査定書をメールでお送りし、特例の期限が迫っているかどうかもあわせてお伝えします。
文責:リノーズ株式会社 代表取締役 美澤由佳子



