親が亡くなって登記を取り寄せたら、実家の敷地の隣に「畑」と書かれた土地が一緒に出てきた。見た目は庭や物置きの土地とつながっているのに、登記の地目だけ畑のままになっている——柏市の北部や沼南エリア、野田市・我孫子市の実家では珍しくない話です。
結論から書きます。農地つきの実家は売れます。ただし宅地の部分と農地の部分は別の手続きになり、農地側には「農地法の手続きが終わるまで売買が完了しない」という時間差が生まれます。この時間差を知らずに売りに出すと、買い手が決まってから2〜3か月止まります。先に調べて日程に織り込んでおけば、止まりません。
まず手元で確認する3つのこと
最初にやることは、現地に行くことでも業者を探すことでもなく、紙の確認です。次の3つが分かれば売却の道筋はほぼ決まります。
- 登記事項証明書の地目……「田」「畑」なら農地法の対象です。現況が庭や駐車場でも、登記が農地のままなら手続きは必要です
- 都市計画の区域……市街化区域か市街化調整区域か。ここで手続きの重さが大きく変わります
- 生産緑地の指定があるか……柏市都市部都市計画課(04-7167-1144)で確認できます
あわせて公図を取ると、母屋の敷地と農地がどこで分かれているかが見えます。「実家の庭だと思っていた部分が、登記では畑だった」というのはよくあります。

「畑だから売れない」と言われてそのままの土地、よくあります。まず見るのは登記の地目と、市街化区域か調整区域かの2点です。
結論:出口は「転用して売る」か「農地のまま売る」の二択
- 転用して売る(農地法5条)……宅地などに用途を変える前提で、農家以外の買い手に売る方法。実家の売却ではこちらが主役です
- 農地のまま売る(農地法3条)……買い手は原則として農業を営む人に限られます。価格は下がりますが、手続きは比較的早く済みます
どちらを選ぶかは、好みではなく転用の許可が取れる見込みがあるかで決まります。そしてその見込みは、市街化区域か市街化調整区域かでまったく変わります。
相続したら、まず10か月以内に農業委員会へ届出
売る前に済ませる手続きがあります。相続や遺贈で農地の権利を取得したときは、農地法第3条の3にもとづき、権利を取得したことを知った時点からおおむね10か月以内に農業委員会へ届出をします。相続の場合は農地法3条の許可は要りませんが、この届出は必要です。届出をしないと10万円以下の過料の対象になると農地法で定められています。
相続登記の義務化(3年以内)とは別の期限です。実家の相続では、相続登記・農業委員会への届出・相続税の申告(10か月)の3つが並行して走ります。柏市の窓口は農業委員会事務局(本庁舎別館4階、04-7167-1549)です。

えっ、許可が下りるまで2か月もかかるの?——しかも締切は毎月20日。買い手が決まってから動くと、そこで全部止まるんですよ。
市街化区域の農地は「届出」。その日のうちに受理される
市街化区域にある農地の転用は、許可ではなく農業委員会への届出で足ります(農地法4条・5条の許可は不要)。柏市の案内では、届出から受理通知書の交付までの流れは窓口で30分から1時間ほどとされています。混雑状況によって前後しますが、何か月も待つ手続きではありません。
つまり市街化区域の農地つき実家は、宅地と同じ感覚で売却を進められます。農地であること自体が値段を大きく下げる理由にはなりません。
市街化調整区域の農地は「許可」。毎月20日締切、1〜2か月かかる
市街化調整区域の農地を転用するには、千葉県知事の許可が必要です。柏市のページには具体的な運用が書かれています。
| 項目 | 柏市の運用(市の公開情報) |
|---|---|
| 申請の締切 | 原則として毎月20日まで(閉庁日にあたる場合はその直前の開庁日) |
| 事前相談 | 申請締切日の10日以上前に行う |
| 許可までの期間 | 約1か月〜2か月 |
| 提出先・様式 | 柏市農業委員会へ。千葉県所定の様式・書類を各2部 |
| 窓口 | 農業委員会事務局(柏市柏5丁目10番1号・本庁舎別館4階)04-7167-1549 |
見ていただきたいのは締切と期間です。事前相談から許可まで、最短でも2か月前後、余裕を見ると3か月。買い手が決まってから動き始めると、その間ずっと契約が完了しません。売りに出す前に事前相談まで済ませておくのが、いちばん効く準備です。
さらに、転用の許可が出ても、市街化調整区域では建物を建てるために都市計画法第43条の許可が別に必要になることがあります。農地法と都市計画法の2段構えです(市街化調整区域の家は売れる?柏市の線引きと43条許可)。

前の相続で納税猶予を受けていた農地は、転用すると猶予された税金を納めることになります。売る前に必ず確認させてください。
農地の区分で、許可の見込みが変わる
調整区域の農地は、営農条件や市街地との距離で区分され、転用の許可が出やすいものと原則として出ないものに分かれます。
| 区分 | おおまかな性格 | 転用の見込み |
|---|---|---|
| 農用地区域内農地(青地) | 農業振興地域の中で農地として使う区域 | 原則不許可 |
| 甲種農地・第1種農地 | 大区画に整備された農地、良好な営農条件 | 原則不許可 |
| 第2種農地 | 市街地として発展する見込みがある区域内、または生産性の低い小規模な農地 | ほかに適地がなければ許可の可能性 |
| 第3種農地 | 市街地の区域内または市街地化の傾向が著しい区域内 | 原則許可 |
自分の畑がどれに当たるかは、農業委員会に番地を伝えれば教えてもらえます。ここを調べないまま「農地だから売れない」と判断してしまうのが、いちばん多い取りこぼしです。第3種農地なら話はかなり早く進みます。
生産緑地と納税猶予——いちばん大きな落とし穴
市街化区域の農地で、生産緑地の指定を受けているものがあります。固定資産税が農地課税のままになるかわりに、農地として管理する義務があり、建物を建てられません。
柏市の案内では、指定から30年が経過した生産緑地は、特定生産緑地に指定すれば買取り申出ができるまでの期間が10年延長され、農地課税と次の相続での納税猶予が続きます。指定しない場合は30年経過後いつでも買取りの申出ができますが、課税は宅地並みに変わり、次の相続からは納税猶予が使えません(柏市都市部都市計画課 04-7167-1144)。
そしてもう一点、これが本当の落とし穴です。前の相続で相続税や贈与税の納税猶予を受けている農地を転用すると、猶予されていた税金を納めなければならなくなることがあります。柏市の農地転用のページにも注意事項として明記されています。猶予額は大きくなることがあるので、売る前に必ず税理士と農業委員会に確認してください。
売り方と契約の組み方
- 宅地と農地をまとめて、転用許可を条件に売る……許可が下りたら契約が成立する「停止条件付き」の形にします。買い手の不安を契約で吸収する方法で、調整区域ではこれが基本です
- 隣地の農家の方に農地だけ売る……農地法3条の手続きで済み、まとまった土地として価値が出ます。宅地は別に売却します
- 買取で引き受ける……許可の調査と申請、残置物の処理まで含めて引き受けます。相続人が複数いて早く分けたい場合に向きます
野田市や我孫子市の調整区域でも同じ考え方です(野田市の実家・空き家はいくらで売れる?)。
リノーズにできること
- 地目・区域・農地区分・生産緑地の4点を調べて1枚の資料にします……登記と公図を取り、農業委員会と都市計画課で確認します
- 事前相談から許可までの日程表をお作りします……毎月20日の締切に合わせて逆算します
- 仲介と買取の両方の金額をお出しします……片付けや草刈りも含めて進められます(空き家の売却・活用)
まとめ
- 農地つきの実家は売れる。ただし農地部分は農地法の手続きが終わるまで売買が完了しない
- 相続したら、おおむね10か月以内に農業委員会へ届出(農地法3条の3)。相続登記の3年とは別の期限
- 市街化区域は届出で足りる。柏市では窓口で30分〜1時間ほどで受理通知書
- 市街化調整区域は千葉県知事の許可。柏市は原則毎月20日締切、事前相談は締切の10日以上前、許可まで約1〜2か月
- 前の相続で納税猶予を受けている農地の転用は、猶予税の納付が発生することがある。売る前に税理士へ
「農地だから売れない」と言われてそのままになっている土地ほど、調べると道が見つかります。登記事項証明書と公図、固定資産税の納税通知書をお送りいただければ、農地の区分と転用の見込みを調べたうえで無料査定をお出しします。最短30分で価格と査定書をメールでお返しします。家の片付けから一緒にお任せになりたい場合は実家まるごとパックもご相談ください。
※この記事の制度・運用は柏市および国の公開資料をもとに執筆時点で整理したものです。農地区分や許可の見込みは番地ごとに異なり、基準も改正されます。必ず柏市農業委員会事務局(04-7167-1549)でご確認ください。
(執筆:リノーズ株式会社 代表取締役 美澤由佳子)



