相続税の申告をお願いした税理士さんから「お母さまの土地の評価額は2,800万円です」と言われた。でも不動産会社の査定は2,100万円だった。どちらが本当の値段なのか分からない——相続のご相談で、いちばん多い混乱がこれです。
結論から書きます。相続税の評価額と、売れる値段は別物です。相続税の評価額は税金を計算するための物差しで、買い手が実際に出す金額ではありません。そして相続税の評価額は「路線価×面積」ではなく、土地の形と道路付けに応じた補正を積んで決まります。この補正を入れ忘れると、払わなくてよい税金を払うことになります。
まず、課税されるかどうかを基礎控除で見る
評価額の計算に入る前に、そもそも相続税がかかるのかを確認します。基礎控除は次のとおりです。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
相続人が子2人なら4,200万円、子3人なら4,800万円。遺産の総額(土地・建物・預貯金・保険金などの合計から債務・葬式費用を引いた額)がこの金額以下なら、相続税の申告は原則として不要です。
柏市の戸建ての実家で、土地が30〜40坪、預貯金が数百万円というケースだと、基礎控除の中に収まることが珍しくありません。「相続税がかかる」と思い込んで慌てて売るのは、順番が逆です。ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使ってはじめて税額が0になる場合は、申告そのものが必要になります。

税理士さんの評価額と査定額が違う、と驚かれる方が多いです。測っているものが違うだけで、どちらも間違っていません。
土地の評価は「路線価×面積」ではない
市街地の土地は路線価方式で評価します。路線価は、国税庁の財産評価基準書で道路ごとに1平方メートルあたりの価額として公表されている数字です。柏市の住宅地なら路線価図に「150D」のような記号が並んでいます。数字が1㎡あたりの千円単位の価額、アルファベットが借地権割合(Dなら60%)です。
よく誤解されるのが、ここに面積を掛けて終わり、という計算です。実際は、まず奥行の長さに応じた奥行価格補正率を掛けます。
自用地評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 各種の補正率 × 地積
奥行が極端に短い土地や、逆に長すぎる土地は、同じ面積でも使いにくいので評価が下がります。角地なら側方路線影響加算で上がる、という逆向きの調整もあります。
もうひとつ押さえておくと話が早いのが水準です。路線価は公示地価の8割程度、固定資産税評価額は7割程度に設定されています。路線価÷0.8で取引価格のあたりを付けるという見方ができます(柏市の売却相場の見方)。
評価額を下げる4つの補正(柏市の実家でよく当たるもの)
昭和40〜50年代の分譲地や、古い集落の中の土地には、評価を下げる要素がそろっていることが多いです。
| 補正 | どんな土地か | 柏市でよく見る例 |
|---|---|---|
| 間口狭小補正率 | 道路に接している幅が狭い | 旗竿地。間口2m・3mで奥に敷地が広がる形 |
| 奥行長大補正率 | 間口に対して奥行が長い(おおむね2倍以上) | 細長い短冊形の区画。古い集落の中に多い |
| 不整形地補正率 | 三角形・L字形など整形でない | 道路のカーブに沿った区画、分割を重ねた土地 |
| がけ地補正率 | 斜面を含む(おおむね30度以上) | 台地と低地の境。根戸・布施・花野井などの高低差のある区画 |
不整形地の補正は「かげ地割合」で決まります。評価する土地をすっぽり囲む四角形(想定整形地)を描き、そこから実際の土地を引いた余りが想定整形地に対してどのくらいかを計算します。余りが大きいほど補正が大きくなり、不整形地補正率は0.60が下限です。形が悪い土地は、最大で4割引きになりうるということです。道路に接していない土地(無道路地)も、通路を開設する費用を考慮した控除ができます。いずれも申告する側が土地の形を測って主張しなければ反映されません。

間口が狭い、奥行が長い、形が悪い。この3つは申告する側が主張しないと評価に入りません。黙っていると高いまま計算されます。
セットバックが必要な部分は70%を控除できる
柏市の古い住宅地では、前の道路の幅が4m未満ということがよくあります。建築基準法42条2項の道路で、建て替えのときに敷地を後退させる(セットバックする)必要があるケースです。
国税庁の説明では、セットバックが必要な部分は、通常どおり評価した価額から70%相当額を控除して評価します(財産評価基本通達24-6)。将来道路になる部分なので、自由に使えないぶんを差し引くという考え方です。
よく似た話で、都市計画道路の予定地の区域内にある宅地も、地区区分・容積率・地積の割合に応じた補正率で評価が下がります。該当するかは柏市都市部都市計画課(04-7167-1144)で確認できます。この2つは見落とされやすく、しかも金額が大きく動きます。
柏市は三大都市圏。500㎡以上なら規模格差補正が使える
広い土地は、分割して売るために道路を入れる必要があり、そのぶん1㎡あたりの価値が下がります。これを反映するのが「地積規模の大きな宅地の評価」です。
適用の面積要件は、三大都市圏で500㎡以上、それ以外の地域で1,000㎡以上。国税庁の資料では、三大都市圏に含まれる千葉県の市町村として柏市が全域で挙げられています(松戸市・野田市・流山市・我孫子市・鎌ケ谷市も同じく全域)。つまり柏市の実家は、土地が500㎡(約151坪)以上あればこの評価の対象になりえます。
ほかの要件は、路線価地域では普通商業・併用住宅地区または普通住宅地区にあること、市街化調整区域にないこと(一定の場合を除く)、工業専用地域にないこと、指定容積率が400%以上の地域にないことなどです。
規模格差補正率 =(地積 × Ⓑ + Ⓒ)÷ 地積 × 0.8
三大都市圏の普通住宅地区なら、500㎡以上1,000㎡未満でⒷ0.95・Ⓒ25、1,000㎡以上3,000㎡未満でⒷ0.90・Ⓒ75。600㎡の土地なら補正率は0.79前後で、評価額が2割ほど下がる計算になります。古い集落や農地を含む実家では500㎡を超えていることがあるので、面積は必ず確認してください。

柏市は三大都市圏に入るので、土地が500平方メートル以上あれば評価が下がる制度が使えます。面積はまず確認してください。
評価額が高い=高く売れる、ではない
相続税の評価額は、全国の土地を同じルールで機械的に測るための物差しです。一方で売れる値段は、その土地を実際に買いたい人が何人いるかで決まります。
| 評価額より売値が低くなりやすい土地 | 評価額より売値が高くなりやすい土地 |
|---|---|
| 駅からバス便、道が狭く車が入りにくい | 駅徒歩圏、道路付けがよい |
| 建て替えの可否がはっきりしない | 2区画に分割して売れる広さと形 |
| 残置物・樹木・越境があり買主が手間を読めない | 更地に近く、すぐ建てられる |
| 擁壁や高低差の補強にお金がかかる | 再開発や区画整理が進んだエリア |
補正率は土地の「形」を見ますが、買い手は「使いやすさ」と「そこに住みたいか」を見ます。評価額2,800万円の土地が2,100万円でしか売れないことも、逆に3,400万円で売れることもあります。どちらも間違いではなく、測っているものが違うだけです。
売却の判断に、評価額をどう使うか
- 基礎控除を超えるかを概算する……超えないなら、相続税の評価で悩む必要はありません
- 超えるなら、使える特例を先に確認する……小規模宅地等の特例は保有を続けることが要件なので、売る時期と直結します
- 売ったあとの税金も並べる……相続空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例には期限があります
- 最後に、実際の売値を確かめる……評価額は売り出し価格の根拠になりません
リノーズにできること
- 評価額とは別に、実際に売れる価格をお出しします……成約事例をもとに、仲介と買取の両方の金額を並べます
- 土地の形と道路付けを現地で確認します……間口・奥行・高低差・セットバックの要否は、申告で補正を主張する材料にもなります
- 面積が500㎡を超えていないかを登記と公図で確認します……特例の要件と売却時期がぶつかりやすいので、順番から整理します
まとめ
- 相続税の評価額と売れる値段は別物。評価額は税金を計算するための物差し
- 基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数。まずここを超えるか確認する
- 土地の評価は路線価×面積ではない。奥行価格補正から始まり、間口狭小・奥行長大・不整形地・がけ地の補正が積み上がる。不整形地補正率の下限は0.60
- セットバックが必要な部分は70%を控除して評価する(評価基本通達24-6)
- 柏市は三大都市圏に全域が含まれるので、500㎡以上なら地積規模の大きな宅地の評価の対象になりえる
評価額が出て「これで売れるのか」と迷ったら、売値のほうを先に確かめてください。登記事項証明書と公図、固定資産税の納税通知書をお送りいただければ無料査定をお出しします。最短30分で価格と査定書をメールでお返しします。片付けや残置物も含めてまとめてお任せになりたい場合は実家まるごとパックもご相談ください。
※この記事の制度は国税庁および柏市の公開資料をもとに執筆時点で整理したものです。補正率の適用や税額の判断は個別の事情で変わります。相続税の申告は必ず税理士にご相談ください。
(執筆:リノーズ株式会社 代表取締役 美澤由佳子)



