「押入れも物置も手つかずで、とても売れる状態じゃない」。実家の売却のご相談で、いちばん多く聞く言葉です。親御さんが施設に入られたあと、あるいは亡くなられたあと、家具も食器も衣類もそのまま残っている。片付けを考えただけで気が重くなって、話がそこで止まってしまう。
先に結論をお伝えします。荷物が残ったままでも家は売れます。買取なら残置物ごと引き取れます。ただし「ごと」の中身は契約書の特約で決まり、売主が自分の手で出しておかないといけないものが6つだけあります。そこを知らずに任せてしまうと、お金と気持ちの両方で後悔が残ります。
そもそも「残置物」とは何か。付帯設備との線引き
残置物とは、引渡しのときに家に残る売主の所有物で、買主が使わないものです。家具、家電、衣類、食器、布団、段ボール。対して付帯設備は、エアコン・給湯器・照明器具・網戸・物置のように、建物と一緒に引き継ぐ設備です。
境目は「買主が使うかどうか」だけです。同じエアコンでも、使うなら付帯設備、使わないなら残置物になります。だから売買契約では付帯設備表を作り、1つずつ有無と引き継ぐかを確認します。ここを曖昧にしたまま引渡すと、引渡し後に「これは処分費をもらっていない」という話になります。

片付けが終わらないから売れない、と思い込んでいる方が本当に多いです。順番は逆で、先に金額を知ってから片付ける範囲を決めたほうが楽になります。
「残置物ごと買取」が成立する仕組み
買取は、不動産会社が自分で買主になる取引です。買った家は手を入れて再販するので、どうせ内装は解体します。つまり荷物があるかないかより、建物と土地そのものの条件が価格を決めます。処分費は買主が負担し、その分を価格から引く。それだけの話です。
処分費の目安は4LDKの戸建てで17万〜45万円ほどで、内訳は4LDKの残置物処分、費用はいくら?にまとめました。
仲介との違いが出るのはここです。仲介の買主は一般の方なので、内見で荷物を見ると「自分で片付けなければいけない」と考えます。その不安は処分費の実額より大きく値引きに出ます。手取りの比べ方は実家は片付けてから売る?そのまま売る?に書きました。
契約書のどこに書かれるのか
ここが本題です。「荷物ごとでいいですよ」という口約束ではなく、売買契約書の特約条項に書きます。典型的には次の3点が並びます。
- 現況有姿での引渡し。売主は修繕やクリーニングをせず、今の状態のまま引渡す。
- 残置物の所有権放棄と処分の承諾。売主は残置物の所有権を放棄し、買主が任意に処分することに異議を述べない。
- 契約不適合責任の免責。雨漏りやシロアリなどが後から出ても売主は責任を負わない。民法の契約不適合責任は任意規定なので、売主が個人なら特約で外せます。
ただし免責には穴があります。民法572条により、売主が知りながら告げなかった事実には免責特約が及びません。雨漏りを知っていて黙っていた、越境を知っていて書かなかった。その分は免責特約があっても責任が残ります。だから物件状況報告書(告知書)には、不利に見えることも全部書いたほうが売主の身を守ります。
なお、不動産会社が自ら売主になる場合は宅地建物取引業法40条により引渡しから2年以上の通知期間が必要です。買取では立場が逆で、個人の売主側に有利な特約が組めます。

免責の特約があるから何も言わなくていい、と考える方がいますが逆ですよ。知っていて黙っていた分だけが後に残りますから。
「ごと」でも、先に出さないといけないもの6つ
| 出すもの | 理由 |
|---|---|
| 権利証・登記識別情報通知・実印・印鑑証明書 | 決済そのものができない |
| 通帳・現金・金券・貴重品 | 処分後に出ると所有権の争いになる |
| 位牌・仏壇・神棚・遺影・写真・手紙 | 処分されてから気づくと取り返せない |
| 車・バイク・原付 | 不動産売買では引き継げない。名義変更か廃車が必要 |
| 処分困難物(ガスボンベ・灯油・農薬・消火器・タイヤ・金庫・ピアノ) | 買主が追加費用を見込むため、申告がないと後で減額交渉になる |
| 売買契約書・保険証券・確定測量図・建築確認の書類 | 価格と手続きに直結する |
このうち2番目と3番目は、お金と気持ちの問題です。業者に任せきりにすると、仏壇の中の位牌や、アルバムや、たんすの奥の封筒が、まとめて処分されます。仏壇の扱いは遺品整理で仏壇はどうする?を参考にしてください。ここだけは必ずご自分の目で一度通してください。
荷物の量で価格はどれくらい動くか
| 荷物の状態 | 価格への影響の目安 | 注意 |
|---|---|---|
| 生活用品が残る程度(2トン車1台) | 3万〜10万円ほどの控除 | ほぼ影響しない |
| 家具家電がそのまま(4LDKの一般的な状態) | 17万〜45万円ほどの控除 | 処分費の実額どおり |
| 物置・庭・屋根裏まで満杯 | 上記+人工と搬出の費用 | 建物の傷みも疑われ、別に減額されることがある |
| 処分困難物がある | 1品ごとに追加 | 先に伝えておけば減額交渉にならない |
いずれも目安です。物量だけでなく、前面道路の幅・階段・搬出経路・時期で変わります。

ご自分で出していただくのは6つだけです。あとはこちらで引き取れますので、まず現地を見せてください。
仲介で「そのまま」売るときの注意
仲介でも現況渡しはできます。ただし買主が住宅ローンを使う場合、金融機関が担保評価をします。荷物で部屋が見えないと評価が出にくく、融資の条件が厳しくなることがあります。内見の印象も落ちるので、売り出し期間が延びやすい。
条件の良い物件なら、片付けてから仲介に出したほうが手取りが増えます。駅から遠い、建物が傷んでいる、期限がある。この場合は買取のほうが残ることもあります。両方の金額を並べてから決めるのがいちばん確実です。
リノーズにできること
私たちは柏市・松戸市・流山市・我孫子市・野田市で、相続した家や空き家の買取と仲介をしています。荷物が残ったお宅では、現地を見たうえで「荷物ごと当社が買い取る価格」と「片付けてから仲介に出す場合の想定価格」を両方お出しして、比べていただく形が多いです。荷物の処分から売却までまとめてお引き受けする実家まるごとパックもあります。遠方にお住まいで何度も通えない方のご相談も多いので、写真と図面だけでも大丈夫です。
まとめ
- 荷物が残ったままでも売れる。買取なら残置物ごと引き取れる
- 残置物と付帯設備の線引きは「買主が使うか」。付帯設備表で1つずつ確認する
- 「ごと」の中身は契約書の特約(現況有姿・所有権放棄・契約不適合責任の免責)で決まる
- 免責特約があっても、知りながら告げなかった事実には及ばない(民法572条)。告知書は全部書く
- 権利証・現金・位牌・車・処分困難物・書類の6つだけは必ず自分で出す
片付けの前に、いくらになるかを知っておくと進め方が決まります。無料査定は最短30分で価格と査定書をメールでお送りします。荷物ごと手放したい方は実家まるごとパックをご覧ください。
(執筆:リノーズ株式会社 代表取締役 美澤由佳子)



