相続した実家の書類を整理していたら、火災保険の証券が出てきた。期限を見たら、もう何年も前に切れていた——柏市と東葛エリアで、これは本当によくあるご相談です。
結論から書きます。火災保険が切れた空き家は、燃えても、燃やしても、費用はすべて自分持ちになります。しかも空き家は、掛け直そうとすると条件が厳しくなり、物件によっては掛け直せないこともあります。
この記事では、切れている状態がなぜ危ないのか、何を確認すればいいのか、掛け直すか売るかをどう判断するのかを順番に整理します。
結論:切れた空き家は「三重に無防備」になる
火災保険が切れた空き家には、次の3つのリスクが同時にのしかかります。
| 起きること | 保険が切れているとどうなるか |
|---|---|
| 自分の実家が焼けた | 建て直しはもちろん、焼け跡の解体・片づけ費用も全額自己負担 |
| 隣から燃え移った | 相手に重い過失がなければ賠償を請求できない(失火責任法) |
| 自分の空き家が他人に損害を与えた | 所有者として賠償責任を負う(民法717条)。賠償の保険も無い状態 |
1つめと2つめは「自分の損」で済みますが、3つめは他人への賠償です。金額の上限がなく、売却代金では足りないこともあります。空き家で一番怖いのは、実はここです。

保険証券が見つからない、というご相談は本当に多いです。契約者が亡くなった親御さんのままかどうかも、あわせてご確認ください。
まず確認する4つのこと
- 保険証券がどこにあるか……見つからなければ、保険会社や代理店、引き落とし口座の通帳から契約をたどれます
- 契約者が亡くなった親御さんのままになっていないか……名義変更をしていないと、保険金の請求で手間がかかります
- 保険期間の満了日……長期契約は満了しても通知が届かないことがあります
- 保険会社に「誰も住んでいない」と伝えてあるか……これが見落とされがちです
4つめについて補足します。火災保険には通知義務があり、建物の使い方が変わったときは保険会社に知らせる決まりになっています。人が住んでいた家に誰も住まなくなったのは、まさにこの「使い方の変更」です。伝えないまま火事になると、保険金が減額されたり、支払われなかったりすることがあります。「保険料を払っているから大丈夫」とは限らないのです。
空き家は「住宅物件」から「一般物件」になることがある
火災保険は、建物の使い方によって区分が変わります。人が生活している家は「住宅物件」。誰も住まず、生活の実態がない建物は「一般物件」として扱われるのが原則です。
どちらになるかは、家財が置かれているか、電気・ガス・水道が生きているか、定期的に人が出入りしているか、といった点で判断されます。別荘のように「使う機会があり、家財が常に備えられている」建物は住宅物件として扱われることもあります。判断は保険会社によって違うので、必ず個別にご確認ください。
一般物件になると、まず保険料が上がります。そして、もうひとつ大きな違いがあります。

隣のもらい火で全焼しても、相手が軽い不注意なら請求できないんだ。自分の保険だけが頼り。切れてたら本当に何も残らない。
地震保険は、原則として付けられない
地震保険は、居住用の建物と生活用の家財を対象にした制度です。一般物件として扱われる空き家には、地震保険を付けられません。
これは軽く見ないでください。地震による倒壊・火災・津波の損害は、火災保険だけでは補償されません。地震で実家が傾いたら、住めないうえに解体費用まで自己負担です。千葉県北西部は地震の多い地域ですから、「空き家だから安いほうでいい」と考えているうちに、いちばん高くつく穴が空いていることになります。
もらい火では、相手に請求できない
ここが誤解の多いところです。日本には「失火ノ責任ニ関スル法律」(失火責任法)という明治時代からの法律があり、軽い不注意による失火では、隣家に対する損害賠償責任を負わないと定めています。責任を問えるのは、失火した人に重大な過失があった場合だけです。
つまり、隣の家の火事が燃え移って実家が全焼しても、相手の不注意が「軽い」ものであれば、修理代も解体費も請求できません。自分の火災保険で直すしかないのです。保険が切れていれば、手元には焼け跡と解体費用の請求書だけが残ります。
逆の立場も同じです。空き家から出火して隣を焼いてしまっても、軽過失なら賠償責任は負いません。ただし——長年放置して雨漏りや老朽化を承知で放っていた、といった事情があると「重大な過失」と評価される可能性が出てきます。放置は、ここでも不利に働きます。

掛け直すか、売るか。どちらを選ぶにしても、いまの価値を知ってから決めたほうが迷いません。
空き家が他人に損害を与えたら、所有者の責任
民法717条は、土地の工作物(建物や塀など)の設置または保存に欠陥があり、それによって他人に損害が生じたとき、まず占有者が、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が賠償責任を負うと定めています。
このとき、所有者の責任は「気をつけていたかどうか」では免れません。知らなかった、遠方で見に行けなかった、という事情は理由になりません。
- 台風で瓦やトタンが飛んで、通行人にけがをさせた
- ブロック塀が倒れて、隣の車を壊した
- 外壁のモルタルが落ちて、歩道にいた人に当たった
- 腐った庭木が倒れて、隣家の屋根を壊した
誰も住んでいない家は、誰も異変に気づきません。欠陥は、見ていないあいだに育ちます。この賠償は、火災保険に付ける施設賠償責任の特約や、個人賠償責任保険でカバーできることがあります。掛け直すなら、建物の補償だけでなくこちらも必ず確認してください。遠方で見に行けない場合の対策は遠方の空き家、管理を代行してもらうと年いくら?にまとめています。
掛け直せるのか——空き家でも入れる保険はある
「空き家だから入れない」と諦めてしまう方がいますが、選択肢はあります。
- 一般物件として引き受けてくれる損害保険会社……保険料は住宅物件より高くなります
- 空き家向けの商品を持つ会社・少額短期保険……補償の範囲は狭めですが、賠償責任をカバーできるものもあります
- 管理サービスとセットになった保険……定期的な見回りを条件に引き受けるタイプ
ただし、屋根が破れている、雨漏りしている、傾いているといった状態だと、引受を断られることがあります。保険料は構造・築年・補償範囲で大きく変わるので、金額はかならず見積りを取ってご確認ください。見積りを頼むときは「解体費用や残存物の取片づけ費用が出るか」「賠償責任の特約を付けられるか」の2点を必ず聞いてください。
保険料だけで決めない——年間の維持費の全体で考える
空き家を持ち続けるとかかるお金は、保険だけではありません。
| 費目 | 目安 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 建物と土地の評価による(柏市の空き家、固定資産税は年いくら?) |
| 草刈り・庭木の手入れ | 年3万〜8万円が目安(空き家の草刈り、柏市でいくら?) |
| 管理の見回り・通水 | 自分で行くなら交通費、代行なら月数千円〜 |
| 火災保険(一般物件) | 住宅物件より高い。物件ごとに要見積り |
さらに、2023年12月13日に施行された改正空家法で「管理不全空家等」という区分ができました。放置して市から指導・勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例(200平方メートル以下の部分は課税標準が6分の1)が外れます。土地の税額が数倍に跳ね上がるということです。
保険が切れているという状態は、多くの場合「もう誰も手をかけていない」というサインです。そのまま持ち続けるなら、保険・管理・税の3つをまとめて立て直す必要があります。その年間コストが、売った場合に手元に残る額と釣り合うかどうか。判断の軸はここです。
リノーズにできること
私たちは柏市を拠点に、東葛エリアで不動産の買取と仲介をしています。代表の私は独立する前、リフォームと賃貸管理の仕事を15年しておりました。
火災保険が切れているご実家のご相談では、まず「持ち続ける場合の年間コスト」と「いま売った場合の手取り」を並べてお出しします。そのうえで、持ち続けるほうがよいご事情があるなら、保険と管理の立て直しをご提案します。売るほうが合理的なら、買取と仲介の両方の金額をお出しします。
荷物が残ったまま、屋根が傷んでいる、県外にお住まいで何度も来られない——どれも問題ありません。片付けから登記、引渡しまでお任せいただける実家まるごとパックもあります。空き家全般の扱いは空き家の売却にまとめています。
まとめ
- 火災保険が切れた空き家は、焼けても、他人に損害を与えても、費用は全額自己負担
- 人が住まなくなったら保険会社への通知が必要。伝えていないと保険金が減額・不払いになることがある
- 空き家は「一般物件」扱いになることがあり、保険料が上がる。地震保険は原則として付けられない
- 失火責任法により、もらい火は相手の重過失がなければ請求できない。頼れるのは自分の保険だけ
- 民法717条により、建物や塀の欠陥で他人に損害を与えたら所有者が賠償責任を負う。注意していたかどうかは問われない
- 掛け直せる保険はあるが、傷みが進んでいると引受を断られることがある
- 2023年12月13日施行の改正空家法で「管理不全空家等」が新設。勧告を受けると住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税が上がる
ご実家がいまいくらになるのかは、住所と築年数が分かればお調べできます。無料査定は最短30分で価格と査定書をメールでお送りします。「保険が切れている」とひと言お書き添えいただければ、持ち続けた場合の年間コストと並べてお出しします。
保険の引受条件や制度の内容は、保険会社と年度によって変わります。この記事の内容は目安としてお読みいただき、契約の可否や金額は保険会社・代理店に、税金は税理士に必ずご確認ください。
リノーズ株式会社 代表取締役 美澤由佳子



