「相続人のひとりと、何年も連絡が取れていません。この実家は売れないのでしょうか」。柏市で不動産の買取・仲介をしているリノーズ株式会社 代表取締役の美澤由佳子です。きょうだいが家を出たまま音信不通、親の前の結婚で生まれた相続人がいる——珍しくありません。
結論から書きます。連絡が取れない相続人がいても、実家は売れます。ただし方法は4つしかなく、うち3つは裁判所を通します。そして実務でいちばん使われる不在者財産管理人は、予納金が60万〜100万円かかることがあります。使わずに済む方法が先にあるので、順番だけ覚えてください。
なぜ「ひとり」で止まってしまうのか
相続した不動産を売るには、相続人全員で遺産分割をして、売主の名義に相続登記をします。遺産分割は全員の合意が条件です。4人のうち3人が賛成していても、1人が連絡不能なら成立しません。
- 遺産分割協議書に押印が揃わず、相続登記ができない
- 名義が亡くなった親のままなので、買主と売買契約を結べない
- 全員の共有で登記しても、売却には全員の同意が必要で、結局同じところで止まる
止まっているのは売却そのものではなく、その手前の相続登記に必要な書類のほうです。

まずは戸籍の附票を取ってみてください。20年前の住所しか知らなかっただけ、という方が本当に多いのです。
最初にやるのは、戸籍の附票で住所を追うこと
裁判所に入る前に、必ずやることがあります。実際には、ここで見つかる方が多いのです。
- 親の戸籍を出生までさかのぼって取り、相続人を確定する
- その相続人の戸籍の附票(住所の履歴が載るもの)を取る
- 出てきた住所に、手紙を出す
「連絡が取れない」の多くは、こちらが20年前の住所しか持っていないだけです。戸籍の附票には住民票を移した履歴が残るので、現住所にたどり着けることがよくあります。手紙は内容証明にせず、普通の封書で事情だけを書くほうが返事が来ます。
方法① 不在者財産管理人(予納金60万〜100万円)
所在が分からない相続人の代わりに財産を管理する人を、家庭裁判所に選んでもらう方法です。生きているが居場所が分からない、という一般的なケースで使います。
- 申立先…不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所
- 申立手数料…収入印紙800円(ほかに郵便料。金額は裁判所ごとに異なります)
- 主な書類…不在者の戸籍謄本と戸籍の附票、管理人候補者の住民票、不在の事実と財産を証する資料、利害関係を証する資料
- 予納金…事案に応じて60万〜100万円程度を納める場合がある(家庭裁判所の案内に示された目安)
- 売却するには…選任だけでは売れません。家庭裁判所の権限外行為許可を得て、管理人が不在者に代わり遺産分割と売却を行います
管理人は不在者の利益を守る立場なので、相場より安い価格では売却の許可が出ません。予納金は申し立てた人が立て替えるため、きょうだい間で「誰が出すのか」が次の揉め事になりがちです(きょうだいで揉めないために)。

予納金が60万円から100万円。ここで固まる方が多いんだ。だから先に売値を出しておくんだよ。
方法② 失踪宣告(7年・官報公告料5,298円)
生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てられます。確定するとその人は法律上死亡したものとみなされ、その子が代わって相続人になります。
- 普通失踪…生死が7年間明らかでないとき
- 危難失踪…戦争、船舶の沈没、震災などの危難に遭い、危難が去った後1年間生死が明らかでないとき
- 申立先…不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所
- 費用…収入印紙800円と郵便料のほか、官報公告料5,298円(届出の催告3,359円+失踪宣告1,939円)
費用はずっと安く済みます。ただし使える場面が限られます。条件は「連絡が取れない」ではなく「生死が分からない」こと、しかもその状態が7年続いていることです。会っていないだけの相続人には使えません。
当社では査定は無料、最短30分で価格をご回答し、しつこい営業はいたしません。「この状態で売れるのかだけ知りたい」というご相談でも構いません。相続した家や空き家の出口は空き家の買取・相続のご相談をご覧ください。
方法③ 所在等不明共有者の持分取得(相続から10年の壁)
令和3年の民法改正で、所在の分からない共有者の持分を、裁判で他の共有者が取得できる仕組みができました(民法262条の2)。申立先は不動産の所在地の地方裁判所です。
- 共有者が地方裁判所に申し立てる
- 裁判所が公告し、登記上の住所に通知する。異議の届出期間は3か月を下回らない
- 裁判所が決めた額(持分の時価相当額)を供託する。供託しないと却下される
- 裁判が確定すると持分が移り、不明だった共有者は時価相当額を請求できる
ただし相続した不動産には大きな制限があります。遺産分割をすべき共同相続人の間では、相続開始の時から10年を経過していないと、この裁判はできません。親が亡くなって数年の段階では使えません。

期限は相続登記の3年と控除の3年です。1年以上前に動き出せば、どの方法でも間に合います。
方法④ 自分の持分だけを売る
自分の共有持分だけを売る方法で、これだけは全員の同意が要りません。ただし価格は持分割合どおりになりません。買った側も家を自由に使えないからです。最後の手段です。
4つの方法を並べて比べる
| 方法 | 使える場面 | 費用の目安 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 戸籍の附票で探して手紙 | 住所が古いだけのとき | 証明書の手数料のみ(数千円) | 2週間〜2か月 |
| 不在者財産管理人 | 生きているが所在不明 | 印紙800円+予納金60万〜100万円 | 選任+許可で数か月 |
| 失踪宣告 | 生死が7年分からない | 印紙800円+官報公告料5,298円 | 公告を含めて1年前後 |
| 持分取得の裁判 | 共有で、相続から10年経過 | 供託金(持分の時価相当額) | 公告3か月以上+審理 |
(費用・期間は裁判所の案内にもとづく目安です。事案で変わるので、手続きは弁護士・司法書士にご確認ください)
放置すると間に合わなくなる3つの期限
- 相続登記の申請義務…3年。不動産を取得したことを知った日から3年以内。怠ると過料の対象です
- 相続空き家の3,000万円特別控除…相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。税負担で数百万円変わります
- 取得費加算の特例…相続税の申告期限の翌日から3年以内の譲渡
管理人の選任から許可まで数か月、失踪宣告なら1年前後。売却にも3〜7か月かかるので、期限の1年以上前に動かないと間に合いません。期限は年度で変わります。判断は税理士か税務署でご確認ください。
動き出す順番(5ステップ)
- 親の戸籍を出生までさかのぼり、相続人を全員確定する
- その相続人の戸籍の附票を取り、現住所に手紙を出す
- 見つからなければ、どの方法が使えるかを整理する(生死が分かるか、相続から何年経ったか)
- 先に実家の価格を出す。予納金60万〜100万円を使う価値がある家かは、売値が分からないと決められません
- 司法書士か弁護士に、申立てを依頼する
4番を3番より先にやってもかまいません。順番を逆にしないことだけです。
リノーズにできること
私たちは柏市・松戸市・流山市・我孫子市・野田市で、相続した実家や空き家を扱っています。連絡が取れないご相談では2つをお出しします。①いまの状態で実家にいくらの値段が付くか(買取と仲介の両方)。②その金額に対して、手続きにかける費用と時間が見合うかどうか。
申立てそのものは司法書士・弁護士の仕事です。ご希望があれば専門家をご紹介します。片付けや残置物の処分は実家まるごとパックでお引き受けできます。
まとめ
- 連絡が取れない相続人がいても実家は売れる。方法は4つ
- 最初は戸籍の附票で住所を追う。費用は数千円
- 不在者財産管理人は予納金60万〜100万円。売却には権限外行為許可が要る
- 失踪宣告は官報公告料5,298円。生死が7年分からないことが条件
- 持分取得の裁判は、相続開始から10年を経過していないと使えない
- 相続登記3年・控除3年の期限。1年以上前に動き出す
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